映画「世界が食べられなくなる日」と、それに付随する講演会、情報の歪みに対する懸念

2012年、フランスのカーン大学のセラリーニ教授率いる研究グループが、驚くべき論文を発表しました。それによると、「ラットの平均的寿命である2年間、遺伝子組み換えされたトウモロコシを餌として与え続けると、ガンを発症する割合が高くなる。よって、遺伝子組み換えされたトウモロコシには発がん性があると思われる」というものです。

最初、私はこの話をたまたまラジオで耳にして、大変驚きました。

大学の研究でそのような結果が出たのならば、世界的に大変なことだし、遺伝子組み換えトウモロコシは非常に危険だと思ったからです。

 

それまで、遺伝子組み換えについては日本を含め、世界の公的機関、行政機関、研究機関に置いて、食品として人間が摂取することについての科学的な安全評価がなされているのは知識として知っていたので、どちらかというと、私は遺伝子組み換えは技術としては非常に有用なものだけれど、自然界に放出されて自生し始め、独自に生活環の遷移をした場合の長期的リスクについて不明なので、議論の余地がまだまだあるという風に認識していました。

つまり、遺伝子組み換え食品を食べることについては特に異議はなかったのです。

 

そこにこの研究結果です。

寝耳に水っていうくらいの驚きでした。

 

しかし、私が聴いたラジオの内容は、その研究をもとにしたドキュメンタリー映画の試写会開催の告知で、研究論文について深く語られることはありませんでした。

 

研究論文の内容と、その世界的評価について、とても興味を持った私は、もちろんネットで調べました。

 

私は、食に関する情報を得たときに、それについて調べる場合、あるポリシーを持っています。

「個人のブログや意見は参考にせず、その情報のもとになった研究論文の原本・それに対する

公的機関・第三者機関の評価・検証論文の内容をもとにその情報の正否を判断し、自身の意見を持つ」ということです。

 

こういう仕事をしていると、飲食店や小売店、ツイッターやフェイスブックなど、さまざまなところから食に関する情報が入ってきます。中には噂みたいなものから都市伝説並みのものまであります。

 

専門家でもなんでもない個人が、そういう情報を他人から伝聞して、さも専門家のふりをして薄っぺらい知識・意見をひけらかしているブログはごまんとあります。そんなものは参考にはなりません。

 

それをうわべだけ読み取って鵜呑みし、さらに他人に伝える。小学生の伝言ゲームのように、尾ひれや背びれ・胸びれがついて、終いにはその情報は最初の原型など見る影もない一匹の魚となって、独り歩きを始めてしまうのです。これこそ、行政や社会の思惑などと関係なく、大多数の一般市民が気づかずに行ってしまう「情報操作」です。

 

SNSで誰もが情報発信できる時代、一人一人がきちんと情報の正否を判断できるようにしなければ、デマが飛び交い、混乱を起こしてしまいます。

 

食品を育てる人間として、常に正しい知識を仕入れ、ぶれない意見を持ち、お客様とコミュニケーションを図ることが、生産者としての正しい形だと考えます。

 

話がそれました。

 

ネットで該当論文について調べたところ、EFSA(欧州食品安全機関)は、「この論文は評価に値しない」と結論付けていることがわかりました。

具体的内容については、

FSIN(食品安全情報ネットワーク)のホームページ

https://sites.google.com/site/fsinetwork/jouhou/gm_maize

及び、バイテク情報普及会のホームページ

https://www.cbijapan.com/topic_results.php?topic_kbn=5&topic_id=201200000017

に掲載されていますので、是非ご覧ください。

 

最初こそ、この論文は世界的に注目を集めたものの、科学的根拠や実験方法に欠陥が多いダメ論文だったわけです。結局フランス政府はじめヨーロッパ各国は「遺伝子組み換えトウモロコシの安全性について、再考は必要ない」と結論付け、世界各国もそれに賛同しました。欧州のマスコミも最初こそ騒いだものの、今ではダンマリしているといいます。

 

同時に発表されたドキュメンタリー映画にも、怪しい点があります。それは、2012年発表の論文なのに、映画まで2012年に発表されているということです。

 

不自然だとは思いませんか?

 

まるで最初からこういう(ラットががんを発症するという)結果がわかってたかのようなタイミングの良さです。

 

私は映画をまだ見ていませんが、世界的にトンデモ論文の烙印を押された研究を基にしたドキュメンタリー映画など、信用する気にもなりません。

 

ザ・コーヴと同じくらい信用性に欠ける、ドキュメンタリーとも言えない映画だなぁと、見る前から思ってしまいます。

 

なのに、日本はこの研究論文と映画を手ばなしで絶賛している人が多い。

ここまで自分で情報を検証できない人が多いのかとがっかりしました。

 

もちろん、セラリーニ教授の言うとおり、ラットの寿命である2年間、検証を行った論文は他にないのかもしれません。しかし、その検証方法が歪んだものである以上、議論のしようがありません。

EFSAはセラリーニ教授に対して、持てるすべての遺伝子組み換えトウモロコシにおける研究結果と論文などの情報を提供して、教授の発表した論文の検証に足りない追加データの提出を要求していますが、教授は全く応じる気配も見せていない様子です。

 

正しい国際規格に準じた方法で、同じくラットの寿命である2年間研究を行った結果を、早く教授が発表してくれることを願います。

 

最後に、科学的根拠に基づく消費者団体「FOOCOM」ホームページに掲載された、科学ライター松永和紀さんのブログ記事URLを掲載します。

日本で開催された該当論文に関する講演会が、歪んだ情報提供の場になってしまった実際の例を紹介しています。

http://www.foocom.net/column/editor/8814/

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